うたきのお話・八重山の歳時・祭事
初穂願い
- 6月7日(旧暦4月27日)今日の石垣島。稲穂は収穫を迎える黄金色に実ったものから、これから色づいていく青い稲穂が風に揺れています。
約2週間前の旧暦の4月15日にお隣の御嶽では、「初穂願い 」が行われました。
- 初穂願い は、稲穂が豊に実るようにお祈りします。昨年神司を引退された南さん(89歳)のお話では、その稲穂が豊かに実るという表現をこのように話していました。
「牛ヌ目玉
ナーシ ピカピカ光リ マギマギ シ
実入リシメ給リ 」
(牛の目玉のようにぴかぴかと光輝き、大きな実を入下さいますように。)
牛の目玉・瞳って、とても大きくてキラキラしてきれいですよね。この牛の眼玉のように稲穂の一つ一つの粒が大きく光輝いて充実しているように、と代々の神司は祈っていたというのです。素敵な表現だなぁと思いました。
- 今回の初穂願いを終え、いよいよ次は
世ヌ首尾。
世ヌ首尾は、種籾を蒔くことから始まったすべての稲作儀礼の過程が神様のご加護受けて無事終了し、豊かな収穫が出来たことに感謝します。
- 西表島の祖納では、この初穂刈り(シコマ)を執り行った日から豊年祭まで、毎朝公民館から「仲良田節」が流れます。稲穂は夏の朝風に揺れながらこの曲を聴き実を充実させ、収穫、豊年祭を迎えるのです。現在でも続いている素敵な光景です。
仲良田節
①仲良田ぬ米んヤゥ はなり頂粟んヤゥ が
(西表島に名高き仲良田の米も、外離島頂上で採れた粟も)
②粒しらびみきりヤゥ 弥勒世果報ヤゥ
(一粒一粒選りすぐったように豊年満作である)
- これから迎える世ヌ首尾の後は、
御嶽豊年祭、
村豊年祭と続きます。
御嶽豊年祭は、
それぞれの御嶽で予定通り行われますが、
村豊年祭
は新型コロナの影響で昨年に続き開催中止となりました。老若男女、村のエネルギーが爆発する豊年祭。島全体が熱いエネルギーで包まれる夏。
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新型コロナによりそれらが中止となることで、大切なものを改めて考える機会となりました。御嶽は村の人々の腰当(くさてぃ)となり心の支えです。御嶽があるから、そこで祈る神司がいるからシマがシマらしく祭りが輝くのです。祭りには、これまで気づかなかった沢山の陰陽・男と女が形になっています。